BWV1060のオリジナルはケーテン時代にヴァイオリンとオーボエのために書かれた作品で、それをライプツィヒ時代に、バッハ自身が弟子や息子たちと演奏するためにチェンバロ2台のために編曲、その形で後世に伝わり、オリジナルは消失していた。
しかし、研究によってオーボエとヴァイオリンがオリジナルのソロ楽器であったことがほぼ確定した、というバッハのチェンバロ協奏曲に多い「復元協奏曲」の中の1曲である(以前、オリジナル・バージョンによるアンスバッハ・バッハ週間のメンバーによる78rpmの動画をご紹介した)。
それをアンサンブル・アルス・レディヴァヴァは、2台のソロ・ヴァイオリン用に編曲して演奏してる。
この方法では最近、レイチェル・ポッジャーと アンドルー・マンゼ のソロ・ヴァイオリン、 エンシェント室内管弦楽団によるCDもリリースされている。
ここでソロを務めているの、このアンサンブルのメンバーであるドミニク・ブロット(1912年生)とソニア・ロヴィス(1927年生)。
フランスのアンサンブルらしい明晰で、「縦の線」をきっちり揃えた溌溂とした演奏だ。
この78rpmがいつレコーディングされたかは詳らかではないが、1947年2月以前であることは明らかだ。
何故なら、1947年2月1日にポルトガル・シントラ上空で起きたパリーリスボン間の航空機(DC3)墜落事故で、この便に乗っていたアンサンブル・アルス・レディヴァヴァのメンバー8人が全員死亡したからだ。
第二次世界大戦後のクラシック音楽界は、航空機事故で若く才能のある音楽家を失っている。ヴァイオリニスト、ジャネット・ヌヴー(1949年・享年30)、ピアニストのウィリアム・カペル(1953年・享年31)、そして1956年には指揮者のグィード・カンテッリ(1956年・享年36)・・・。
現代に較べて航空機の安全性は高くなかった。
ヴァイオリン・ソロのソニア・ロヴィスはまだ20歳であった。