1942年 ベルリン  G.ハマー『憐れみたまえ、我が神よ』 SP盤【ターンテーブル動画】

「ヨハン・セバスチャン・バッハ 教会カンタータの時間」番組YouTubeチャンネル開設記念第3弾!

 

凄い代物がオランダからやってきた!

 

 

1942年8月から9月にベルリンで録音された『マタイ受難曲』のドイツ・ポリドール製SP盤18枚組。
9枚ずつ収められた2冊のアルバム・ジャケット。とにかく重い。


 

 

 

 

 

もちろん完璧な全曲演奏ではないが、当時の演奏慣習で言えば「ほぼ全曲」と言ってよかろう。
聴きたいと思う楽曲はしっかり収録されている。

 

 

 

 

 

 

指揮はブルーノ・キッテル。合唱はブルーノ・キッテル合唱団。フルトヴェングラー・ファンの方なら、このマタイと同じく1942年に録音されたフルトヴェングラーとベルリン・フィルの2つの『第九』、ひとつは彼の第九の録音の中で“最もエキサイティング”と言われている3月のもの、もうひとつはA.ヒトラーの誕生日前日4月19日に総統を祝う演奏会、いわゆる“ヒトラーの第九”、そのいずれの合唱も担当していたのが、このキッテル合唱団であることはご存知であろう。

 

 

 

1942年8月から9月と言えば、「スターリングラードの攻防戦」の局面が、ドイツ有利からソビエト有利に傾いた時期。この戦闘での大打撃、消耗がナチス・ドイツ敗戦、破滅のきっかけとも言われている。そんな時期に首都ベルリンで録音されたマタイ・・・。

 

幸い盤のコンディションは悪くなく、充分鑑賞に耐えるもの。しかし、コンディション云々の前に、やはり時代背景を知っているが故に感情移入をしたり、「政治と音楽」というナチス・ドイツ時代の音楽を語る場合、避けては通れない問題が頭の中に広がっていく。これが「苦悩から歓喜へ 祝祭としての第九」や「ドイツ国民精神高揚のためのマイスタージンガー」ならまだしも、「死」をテーマにした『マタイ受難曲』であるのだから、なおさらだ。

 

ナチス・ドイツ、あるいはヒトラーとバッハ、特に宗教声楽曲との関係がどうであったかは、ベートーヴェンやワーグナーとのそれと比較すれば、ほとんど語られてきたことはないように思う。
バッハはもちろん禁止音楽ではなく、「ドイツ的なもの」として賞賛されていた。
しかし、ヒトラーは「イエス・キリストはユダヤ人ではなく、アーリア人で、イエスの真の教えはユダヤ人によって著しく汚され、歪曲して伝導された。」と考えていたという。よって「イエス」は尊敬していたが、「キリスト教と教会」を嫌っていたのだと・・・。
だとしたら、教会音楽であり、キリスト教徒の心の拠り所であったバッハの受難曲やカンタータについては、どう思っていたのだろうか?

もし、この辺りについて見識をお持ちの方がいらしたら、是非ご教授いただきたい。

 

このキッテルの録音の前年1941年3月、おそらく四旬節の時期に演奏、録音されたであろうトーマス・カントル、ギュンー・ラミンのマタイを聴く機会について、我々は恵まれている。バッハ教会音楽の総本山ライプツィヒの総力を結集したラミンの、あの重い、そしてやはりその時代を知る現代人の我々にとって、いろいろと考えさられるマタイ。

 

 

 

 

個人的には「メンゲルベルクのマタイ」(1939年4月2日 棕櫚の主日 アムステルダム)よりも、ライプツィヒ、そしてベルリンでのマタイに思うところは多い。

 

 

今回の動画は『マタイ受難曲』の白眉、アリア『憐れみたまえ、わが神よ』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトはグスタ・ハマー。

1896年生まれで、1928年にはベルリン・クロール・オペラで合唱のメンバーとして歌い始めたという。正にO.クレンペラーが監督を務めていたアヴァンギャルドなクロール・オペラ・・・。

その後キャリアを積み上げ、1934年から55年までの長きに渡り、ハンブルク・オペラのトップ・アルトとして活躍した人である。

オペラではR.シュトラウスの『エレクトラ』のクリテムネストラ役が十八番。録音も1943年、H.イッセル=シュミットの下、1957年、オイゲン・ヨッフムの下、いずれもハンブルク・オペラでの実況が残されている。

1957年に現役を退き、ミュンヘンで後進の指導にあたっていたが、1977年1月6日、自動車事故で亡くなっている。

 

まるで、とてつもなく大きく広がる異次元空間で聴くような深く、ほの暗く、劇性を持ったその歌声は、イエスを裏切ったペテロ自責の念を歌った『憐れみたまえ、わが神よ』に相応しい。

 

 

ハマーの歌に寄り添うオブリガート・ヴァイオリンは、終戦までベルリン・フィルに籍を置いた若きコンサート・マスター、エーリッヒ・レーン。録音当時32歳!情に流され過ぎることなく、まさにフルトヴェングラー時代のベルリン・フィルの音を聴かせてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

是非、お聴きください。

 

※余談だが、このマタイの原盤は、潜水艦でドイツから日本に届けられ、日本ポリドールが17,000セットをオーダーした、とのこと。まだ、日本のどこかに18枚のSP盤は残っているのか・・・。

 

 

 

【プレーヤー】

Techinics SL-1200Mk4(78rpm対応機種)
【カートリッジ】
audio-techinica VM670SP
【フォノ・イコライザー】
合研LAB GK05 monoSP(各種イコライザー・カーブが簡単に設定できるモノ盤とSP盤に特化したイコライザー。コスパ最高!)

 

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