【ターンテーブル動画】E.ヘンゲン_F.レーマン カンタータ『満ち足れる安らい、嬉しき魂の悦びよ』BWV170(1951)

7月19日に番組エリザベート・ヘンゲン(コントラルト)、フリッツ・レーマン(指揮)バイエルン国立歌劇場管弦楽団によるカンタータ『満ち足れる安らい、嬉しき魂の悦びよ』BWV170をご紹介した。また、その後フリッツ・レーマンについての個人的思いやレーマンを巡る「タラレバ話」についてもこのブログに拙稿を掲載させていただいた。radik0のタイムフリー聴取期限も過ぎるので、そして海外にいらっしゃる方にもこのBWV170を是非とも聴いていただきたく、【ターンテーブル動画】を上げることにした。

APM 14028

因みに所蔵しているLPは独ARCHIVではなく、英ARCHIV(HELIODOOR RECORD Co., Ltd.)の盤だ。
C/Wはヴァルター・ルードヴィヒ(テノール)と指揮のレーマンを含めても全員で7名(チェロはA.ヴェンツィンガー)による『わが魂はほめ讃う』BWV189(「偽作」と言われている)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このBWV170 がレコーディングされたのと同年の1951年夏、7月29日にバイロイト音楽祭の戦後再開を記念して、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが指揮した歴史的名演、ベートーヴェンの交響曲第9番 ニ短調 作品125『合唱』にアルト・ソロで出演したことにより、エリザベート・ヘンゲンは永遠にその名を音楽演奏史、レコード史に刻むことになったと言ってよいだろう。

 

 

 

 

レーマンについてはたっぷりお話しさせていただいたので、今回はエリザベート・ヘンゲンElisabeth Höngen 1906-1997)について少しだけ。

ヘンゲンは少女時代はヴァイオリンを学んでいたが、ベルリン音楽大学でドイツ語と音楽科学を学ぶのと同時に声楽を学び、歌手になることを決意した。
1933年にヴッパータールでデビューし、1935年から40年まではデュッセルドルフ、そして 1940年、彼女はドレスデン・シュターツカペレ、そして1943年にはウィーン国立歌劇場のメンバーにまで登り上り詰めた。
終戦後はミラノ・スカラ座、ロンドン・コヴェントガーデン、ブエノスアイレスのコロン劇場、アムステルダム、チューリッヒ、ベルリン、ミュンヘンの各オペラハウスでも活躍、1951から52年のシーズンは、ニューヨーク・メトロポリタン・オペラに出演している。

 

1957年、ヘンゲンはウィーン音楽アカデミーの教授に任命され後進の指導にあたり、1971年までウィーン国立歌劇場に出演し、ウィーンだけで44の役を演じたという。
得意とした役柄は、R.シュトラウス『エレクトラ』のクリュテムネストラ、同じく『サロメ』のヘロディアス、『カプリッチョ』のクレロン、ワーグナー『ローエングリン』のオルトルート、同じく『ワルキューレ』のフリッカ、『神々の黄昏』のヴァルトラウテ、モーツァルト『フィガロの結婚』のマルチェリーナ、フンパーティンク『ヘンゼルとグレーテル』のお菓子の魔女、独墺系以外の作品でもヴェルディ『アイーダ』のアムネリス、サン=サーンス『サムソンとデリラ』のタイトル役などがある。
最後のオペラ出演は1971年、ウィーン・フォルクスオーパーでのプッチーニ『修道女アンジェリカ』の侯爵夫人だったという。65歳の時だ。

 

また『第9』についてはフルトヴェングラー以外にも、1947年、戦後演奏許可が下りたカラヤンの、最初のコンサート、そして最初のレコーディング・セッションであるウィーン・フィルとの演奏、録音にも参加している。

 

 

 

 

しかし、残念なことにバッハの声楽作品の録音は全く寂しい状況で、確認できているのはたった2つだけ。
ドイツの同世代のコントラルトで、バッハの声楽作品録音を数多く(教会カンタータだけで確認できたのは26曲)残しているロッテ・ヴォルフ=マテウス(1908-1979)と比較したらその差は歴然だ(ただし、逆にヴォルフ=マテウスにはBWV170の録音がない、という痛恨事!!)。

 

 

ひとつはもちろんこのレーマンとのBWV170、そしてもうひとつは1948年11月、カラヤンとウィーンフィル他によるの約95分程度の『マタイ受難曲』のハイライト録音(ソプラノ・ソロはE.シュヴァルツコップ)だ。この音源はレコードではなく、映画監督エルンスト・マリシュカが、ダヴィンチ、クラナッハ、ルーベンス、ミケランジェロ、ベラスケス、ラファエルなどの絵画とこの録音をコラージュ(ただし、モノクロ・・・)して完成した映像作品で、1949年のヴェネチア国際映画祭に出品されたという。残念ながらのこの作品は観たことも聴いたこともないが、私家盤(海賊盤)として一時出回っていたようだ(画像参照)。



番組でもお話ししたが、BWV170はその第1曲のアリアから「心を持って行かれる」感がとても強い。バッハのカンタータや受難曲の印象的なアリアは3拍子系のものが多く、「持って行かれる」のはその3拍子が関係しているようにも思う。
アルトのアリアで言えばその代表がこのBWV170の表題アリアと、言うまでもなく『マタイ受難曲』の『憐れみたまえ、わが神よ』だ。
この感覚は別にヘンゲン特有のものではもちろんなく、他にも多くのBWV170の名唱は存在し、個人的には録音年順に、ヒルデ・レッセル=マイダン(H.シェルヘン:A)、アーフェ・ヘイニス(S.ゴールドベルク:B)、モーリーン・フォレスター(A.ハイラー:C)、ジャネット・ベイカー(N.マリナー:D)、ユリア・ハマリ(H.リリング:E)、 ヤドヴィガ・ラップ(A.ミシンスキー:F)、マリアンネ・ベアーテ・キーラント(H.ミュラー=ブリュール:G)などを何度も何度も聴いている。さらにカウンターテナー時代が本格的に到来した21世紀に入り、アンドレアス・ショル(P.ヘレヴェッヘ:H)の決定的名盤も誕生している。

 

 

A

B

 

 

 

 

 

 

                   

 

 

C

D

 

 

 

 

 

                   

 

 

 

E

F

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

G

H

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、やはりBWV170 の史上初の全曲録音、1951年10月24日、26日 ミュンヘン アメリカハウスでレコーディングされたエリザベート・ヘンゲン、フリッツ・レーマン/バイエルン国立歌劇場管弦楽団のLPが、一番しっかりと「持って行かれる」レコードだ(CD時代のものに限れば、ヤドヴィガ・ラップが群を抜いている)。 

 1950年代のアメリカハウス(現在のアメリカハウスとは別の建物

 

なお、日本のリート・宗教曲では最も素敵なメゾ・ソプラノと思っている庄司 祐美さんに、「いつか貴女のBWV170 を聴きたいです。」とお手紙したところ、「私もそのような機会が来ることを心から願っています。」というお返事をいただき、早くその時が来ないかと待ち焦がれている(樋口隆一先生に一肌脱いでいただくしかないか・・・?)

 

 

実は今回動画を上げるに際して、放送用に盤おこしをした音源ではなく、別に起こした音源を使用した。LPもプレーヤーもカートリッジもフォノイコライザーもイコライザーカーブも放送の時と同じだが、ちょっとしたこと(敢えて申し上げないが)で、僅かだが音質が向上したような気がしないでもない。

ごゆっくりとお楽しみいただければこれ幸いかな。

 

 

 

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