【ターンテーブル動画】H.レッセル=マイダン・W.バリリ・H.シェルヘン 『憐れみたまえ、わが神よ』~『マタイ受難曲』BWV244(1953)

前回、ヴァルター・バリリがヘルマン・シェルヘンと1954年にレコーディングした『ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 』BWV1041の【ターンテーブル動画】をアップした際、シェルヘンの『マタイ受難曲』(1953年)でヴァイオリン・ソロを務めているのがバリリで、アリアのソロは彼が弾いている、とご紹介した。

その流れで今回の【ターンテーブル動画】は、そのバリリがソロを務め、コントラルトのヒルデ・レッセル=マイダンが歌う『マタイ受難曲』の聴かせ所のひとつ、第二部 第39曲アリア『憐れみたまえ、わが神よ』である。
手許にあるのはWestminster原盤のNixaからほぼ同時期にリリースされたイギリス・オリジナル盤。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンバー表を見ていただきたい。当時のウィーンを代表する歌手たちと、オーケストラの方にはバリリ以外にも、K.レズニチェク(フルート)、K.マイヤーホーファー、K.エールベルガー(ファゴット)などなど、当時のウィーン・フィルの首席が勢ぞろいだ。


『憐れみたまえ、わが神よ』は、弟子ペテロがイエスのことを「知らない」と3回口にした後、涙して悔やんだ、というシーンの直後に、レジタティーヴなしでいきなり歌われる、安っぽくありきたりの表現で申し訳ないが「バッハが残した最も泣ける歌」である。


既に【ターンテーブル動画】には、1942年のグスタフ・ハマー、1957年のアニー・ヘルメスの『憐れみたまえ、わが神よ』もアップしているので、よろしければそちらもご覧いただければこれ幸い。


ヒルデ・レッセル=マイダン(Hilde Rössel-Majdan 1921-2010)はオーストリア・モースビアバウム出身で、ウィーン音楽アカデミーで学び、1946年にデビュー。1950年以来長きに渡ってウィーン国立歌劇場のメンバーとして活躍した。もちろん、スカラ座やコヴェントガーデンにも招かれたし、ザルツブルク、エディンバラ、エクスアンプロヴァンスと言った音楽祭にも出演した。
十八番はR.シュトラウス『ばらの騎士』のアナーニ、同じく『ナクソス島のアドリアネ』の木の精ドリアーデ、モーツァルト『フィガロの結婚』のマルチェリーナなど。メゾ・ソプラノではなくコントラルトなので、主役級の役は回ってこないが、ウィーンのオペラ界にとっては大切な歌手だった。

むしろ、彼女の特性は宗教曲に活かされ、特にオラトリオ、受難曲、ミサ曲、そして教会カンタータと、バッハの作品でその実力を遺憾なく発揮した。
更に大物指揮者の名盤、例えばH.V.カラヤンのモーツァルト『レクイエム』(1961)、同じくカラヤンのベートーヴェン『第九』(1962)、そして極めつけはO.クレンペラーのマーラー『復活』(1963 ソプラノはもちろんシュヴァルツコプ)。ここでも彼女の歌を堪能できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


オペラ歌手としてデビューし、次第にその活動を宗教曲や歌曲の場に移していったと言えるだろう。

バッハの宗教声楽曲の録音で言えば、『マタイ受難曲』はW.フルトヴェングラー盤(1950 第一部のみ)、当シェルヘン盤、そしてシェルヘン盤と同じくウィーン国立歌劇場管弦楽団を指揮したM.ヴェルディケ盤(1959 こちらのヴァイオリン・ソロはW.ボスコフスキー!!)と3つのセッションに参加。

 

 

 

 

 

 

 

『ヨハネ受難曲』(抜粋)はG.プレインウォーク(1952)。

 

 

 

 

 

 

 

 

F.プロハスカとは『マニフィカト』(1957)と『復活祭オラトリオ』(1951)の録音がある。

 

 

 

 

 

 

 

 


教会カンタータに至っては、度々この話題で恐縮だが、1950年代にウィーンに進出したアメリカのレーベル、WestminsterとVangurad Bach Guildの両方に13曲(M.ギーレン:3曲、プロハスカ:2曲、シェルヘン:6曲、ヴェルディケ:2曲)がある。正に「50年代ウィーンのバッハ」には欠くことができないコントラルトだった、と言ってよいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


また、彼女の歌声にどっぷりと浸れるレコードにバッハの『ガイストリヒェ・リーダー』BWV439-507 全69曲をテノールのユグ・カエノと歌い分けた4枚組がある。ある意味ではこのアルバムが彼女のバッハの真骨頂なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

その深く、しかし柔らかく穏やかな心に響く声は、現代の歌手にはなかなか聴くことができない唯一無二のものだ。


バリリとシェルヘンのレッセル=マイダンに寄り添うような『揺れ』を伴った音楽にもジーンとくるものがある。

お楽しみください。

 

 

 

 

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