kainatsuという人

前回は急遽STARMARIEについて、どうしてもお話ししたくなってしまったので、前々回予告させていただいた「これまで私のクリエイティヴィティを最も多く刺激したアーティスト」について、いよいよお話ししたいと思います。

kainatsuさんのことです。

今更なっちゃん(と呼び慣れているので、以下こう記させていただきます。)のプロフィールについてお話しする必要はないと思いますので、今回は彼女との出会いについてのお話をいたします。「何故、静岡と縁もゆかりもないなっちゃんがK−mixで番組をやったり、人気があるのですか?」というご質問をリスナーはもちろん、スポンサーや業界関係者からもよく受けます。さて、何故でしょう・・・?

 

2005年11月20日、渋谷のライブハウスで「力塾設立10周年ライブ」という催しがありました。「力塾」というのは野上力氏が設立したインディー・レーベルで、私は以前から野上氏がこのレーベルから生み出すアーティストや楽曲に興味を持っていて、お付き合いをさせていただいておりました。そんな中、この10周年のイベントにお招きをいただき会場に伺ったのです。

このイベントは力塾に所属するアーティストの何組かが出演するショーケース・ライブだったのですが、事前に野上氏から「最後に風味堂が出るので是非!」というお誘いの言葉がありました。当時、既に風味堂はメジャー・デビューし、人気を集めていましたが、実はその前は力塾に所属していて、このイベントにはスペシャル・ゲストとして出演することになっていたのです。当時、私はメンバーとも顔見知りで、彼らのマネージャーM氏は以前、Birthday Suitという男性2人組ユニットのマネージャーをしていて、私はその頃からM氏とも親しくさせていただいておりました。何を隠そう、そのBirthday Suitのメンバーのひとりが、現在、K−mix の1週間最後を飾る番組「松崎真人 ラジオ新千歳−静岡線」(日 24:00〜25:00)の松崎真人氏なのです(彼との交友録はまたの機会に・・・)。

風味堂のこととは別に、野上氏や力塾のスタッフから「(このイベントで)夏にデビュー・ミニアルバムのサンプル盤をお渡しした 甲斐名都も少しライブをやりますから。」 と聞かされていました。そう言えば確かに、甲斐名都というアーティストの「夕暮れワルツ」というタイトルのアルバムのプロモーションを受けた記憶がありました。でもそれはどちらかと言うと「こんな子もいます。」的な実にそっけないプロモーションだったという記憶です。プロモーションを受けた私の方も「ピアノ弾き語りのシンガーソングライターの女子大学生」というぐらいの印象と、当時このジャンルで絶対的な地位を確立していたaikoさんの後に続けとばかりに、雨後の筍のように登場し続けていたアーティストの一人、というポジティブとはとても言い難い認識だったように記憶しています。もちろん、この時点で彼女が甲斐よしひろさんの愛娘であることなど、知る由もありませんでした。

彼女はイベントの中ほどで、サポートの女性パーカッショニストと共にステージに登場しました。「確かに女子大生だな。しかもまだそんなにステージ慣れはしていないな…。」とすぐに感じ、演奏が始まるのを待ちました。その時、「どんな曲がどんな順番に演奏されたか」とか、「歌や演奏が上手かったか」とか、「MCで何を喋ったか」という記憶は正直多くは残っていないのですが、演奏が始まった瞬間、それまで恥ずかしそうにしていた彼女の表情がどんどん活き活きとしていき、エレピを弾いて歌っている彼女の姿に確実に引き込まれている自分がいることをしっかりと覚えています。
喩えて言うなら、その時の甲斐名都というアーティストは、まるで長い冬眠から目覚め、穴から出てきた小動物が、最初のうちは辺りの気配を探るようにおっかなびっくりキョロキョロしていたのに、次第に自分が自由に動き回れることを知り、野山を駆け巡り始める、といった趣きでした。「何だか凄いものを観てしまった。」と思い、それは風味堂のライブを観た後にもずっと、強く心の中に居座り続けました。

残念ながらライブが終わった会場は多くの関係者でごった返し、直接彼女と言葉を交わすことは出来なかったのですが、会場を後にする時には既に「彼女と番組を作りたい。」という思いを強くし、その数日後には野上氏にその意思を伝えていたと記憶しています。これを読んでいただいている方の中には「本人とも話をせず、どれだけ喋れるのかもわからないのに、そんなに簡単にレギュラー番組って決まっちゃうの?」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、私の場合は大体いつもこんな感じです。それを「ファースト・インプレッション」と呼ぶのか「思い付き」と呼ぶのかは別として・・・。


年が改まった2006年1月末、なっちゃんはスタッフと共に初めてK-mixにやってきました。ちょうどセカンド・ミニアルバム「ソラシド」のリリース直前で、そこに収められた「下北沢南口」(メジャー・デビュー・シングルとは別バージョン)がK-mix では毎日のように流れていた時期です。
初めて話す彼女は、今のなっちゃんを知る方ならとても想像できないかと思いますが、決しておしゃべりが得意な子には思えませんでした。もっと言ってしまえば、人とコミュニケーションを取ることが上手ではない子に見えました。お昼ごはんに鰻を一緒に食べた時も、こちらから聞くことにはちゃんと答えてくれるけれど、彼女自身から何か言葉を発してみようとは思っていない、という雰囲気を感じました。もちろん、22歳の大学生の女の子が、初めて会う41歳の見も知らない男性と、簡単にコミュニケーションを取ることの方が稀なのかもしれませんが・・・(余談ですが、この12年後の2017年末、同じく22歳の女子大学生が私の前に突如出現し、私はこの時とまったく同じ感覚に襲われることになります。そう、TOMOOさんです)。

結局この日は、番組の具体的な話はしませんでしたが、数日後、彼女のスタッフから「名都が『久保田さんとは上手くやっていけそうな気がする』と言ってましたよ。彼女にしては珍しいことです。」と告げられて、胸を撫で下ろしたことをよく覚えています(本人には未確認・・・)。

その後、具体的な番組コンセプトや内容、番組タイトルが決まっていくことになるのですが、その段階で野上さんからある提案、相談を受けました。「名都の番組をK-mixだけではなく、他のFM局でも放送してよいか?」というものです。ラジコのエリアフリー機能が当たり前の現代ならともかく、13年前のあの時代、どうせ番組を作るんだったら、複数の、甲斐名都というアーティストを応援してくれるステーションにネット出来ればそれに越したことはない、というのはアーティスト・サイドからすれば当然の理屈です。しかもその時、具体的に名前が挙がったステーションの担当者たちは、私もよく知っている、というか私がこれまで様々な教えや影響を受けてきたラジオマンたちでした。
しかし私の答えは「NO」でした。確かにより多くの人が聴いてもらえる可能性が高まるかもしれないけれど、私はどうしても「この番組は静岡県だけで流れている」という意識を本人、スタッフ、そしてリスナーに共通して持ってもらいたいと考えていました。そういう意識を共有することで、なっちゃんの番組は、俄然、求心力のようなものを持ち得るのではないか?リスナーは「私たち、僕たちが甲斐名都を応援して行こう!」と思うのではないか?と・・・。結局、野上さんは私のわがままを聞いてくださり、「甲斐名都 よりみちroom」という名前が付けられた25分番組は、K-mixオリジナルの番組、そして甲斐名都初のレギュラー番組として、2006年(平成18年)4月5日(水)20:30にスタートしたのです。

そしてその時、私は心に決めました。「甲斐名都というアーティスを、静岡県の誰もが知っているアーティストに仕立ててみよう。」と・・・。

 

その同じ年の11月8日、なっちゃんはめでたく「下北沢南口」でメジャー・デビューを飾ることになります。
この時、彼女をそれまで応援してきた業界関係者に「甲斐名都 初恋カード」なるプラスティック・カードが配布されました。これは「カードを持っていると何か有形の特典が受けられる」というものではなく、「いち早く甲斐名都を応援してくれたことの証明書」という体で、K-mixでは私の他にも何人かのスタッフがいただきました。
そのカードをもらった時、レーベルのスタッフからこう告げられました。「久保田さんのカードナンバー、M002ですよね。実はM001はお父さん(つまり、甲斐よしひろ氏)に渡されて、その次が久保田さん、ということです。K-mixの他のスタッフさんに渡されたのは、もっと後の番号だと思いますよ。」確かに他のスタッフのそれは20番台や30番台でした。これがどういう意味なのか?本当によしひろさんが1番で、私が2番なのか?もし、そうだとしても、それはなっちゃんの意思なのか…?実はこの13年間、その真実をなっちゃん本人から聞いたことは一度もありません(笑)。でも、そんなことはどうでもよいことで、今でもこのカードを見る度に私は己の意志を確認するのです。

 

このブログがこれからどれだけ続いていくかはわかりませんが、ひとつだけ確かなことがあります。いつかこのブログに登場する人名索引を作ったら、ダントツで「kainatsu」という名前が一番多くヒットする、ということです。「なっちゃんについて語れ」と言われれば、多分200ページくらいの単行本は簡単に書けてしまうのではないかと・・・。

今回はなっちゃんとの出会いについてしか語ることができませんでしたが、では何故一体、彼女のことを私が凄いと思うのか?それをこれまでのエピソードを思い出しながら、これから少しずつ、断続的にお話ししていこうかと思います。

 

投稿をシェアする

LATEST BLOG

いつでも、どこでも、K-MIX!

ラジオで聴く

  • 静岡

    79.2MHz

  • 浜松

    78.4MHz

  • 沼津三島

    86.6MHz

  • 掛川

    80.3MHz

  • 島田

    85.9MHz

  • 富士富士宮

    85.8MHz

  • 下田

    80.5MHz

  • 東伊豆

    78.6MHz

  • 御殿場

    81.6MHz

  • 熱海

    83.0MHz

スマホ・タブレット・PCで聴く

県内のラジオ、過去1週間分無料。
プレミアム会員で全国配信。

→ radiko 公式サイト

RADIO

現在地の周波数に
チューニング

radiko

県内のラジオ無料
プレミアムで全国配信