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神谷宥希枝の独立宣言 ザ☆オーディションVol.12

「神谷宥希枝の独立宣言」(金 21:30~22:00)は2003年4月にスタートした番組なので、もう17年間も続けられてきた長寿番組です。「静岡のアマチュア・ミュージシャンを応援し、静岡のミュージック・シーンを活性化させたい。」という神谷宥希枝の強い気持ちが形になり、音楽シーンやトレンドが変遷する中でも続けられてきたのです。私は「継続は力なり」という言葉が好きですが、この番組はまさにそれを体現した番組だと思っています。
番組がスタートして6年が経とうとしていた2008年に、神谷が「番組主催の県内アマチュア・ミュージシャンのオーディションをやりたい。」と企画書を持ってきました。番組が歩みを進める中で、県内のアマチュア・ミュージシャンをただ番組で紹介するだけではなく、実際に彼らの才能を公の場で明らかにし、その才能を様々な形でサポート、そして彼らを次のステージへステップ・アップさせることが、静岡県のミュージック・ステーションとして次に成すべきことである、というのは私が思うところでもありました。

こうして2009年に「ザ☆オーディション」はスタートしました。その年の反省に基づいて、よりよいオーディションにしていこうと、神谷や私はもちろん、このオーディションを実施するにあたり、我々と同じベクトルを持ち、商売度外視で告知、応募受付、地区審査の会場準備、運営をしてくださるライブハウスや練習スタジオ、音楽スクール、楽器店の皆様からの意見も参考にし、毎年毎年レギュレーションを改善して実施しています。

しかしそんな中、手前味噌ながらこのオーディションが誇れること、一貫して守り抜いているコンセプト、特徴がいくつかあります。まとめるとこんな感じです。

 

(1)年齢、経験、ジャンルを問わない

(2)オーディション出場の動機を問わない

(3)その動機に沿って審査員が丁寧にアドバイスする

 

アマチュア・ミュージシャンのオーディションは権威あるものからローカルな楽器店が行うものまで、日本全国にそれこそ星の数ほどありますが、実は(1)と(2)の両方を兼ね備えているオーディションはほとんどありません。何故かと言えば、これらを問わなければ、あらゆる点で出場者の幅が広くなりすぎ、何を基準に審査をしたらよいか分からなくなるからです。例えば、「中学生のまだ音楽を始めたばかりの子と、定年退職をして時間ができたので改めて音楽を楽しもうと思っている60代のおじさま」とか「プロ、メジャーデビューを目指し、その第一歩と思いエントリーした若人と、ライブを行ったこともなく、ただただ自分の歌や演奏、曲を第三者に聴いてもらい、何でもいいので言葉をもらいたい、と思っている寡黙な出場者」といったシチュエーションを考えていただければ、どういう審査基準を設け、どう審査結果を出すか?が至極困難なことだとお分かりいただけると思います。
また、自作自演のアーティストと、ボーカリストになりたくてボーカル・レッスンに通い、カバー曲でエントリーしてきた人を同じ基準で審査することも難しいことです(よって、ここ数年、「ザ☆オーディション」では「オリジナル部門」と「カバー部門」に分けてエントリーをしていただき、審査しています)。
「音楽で生きていきたい」「音楽は楽しみ、仕事は仕事」、そのどちらの価値観も正しいのです。実際「毎年エントリーし続けることが、自分の歩みを確認する年1回の大切な行事(お勤め)」と考えて出場している方が多い、という事実はこのオーディションが誇れるところだと思っています。
一方でこのオーディションをきっかけのひとつにしてプロの世界に飛び込み、評価されたり評価されつつある出場者もいました。小園美樹崎山蒼志神戸奏汰諭吉佳作/menがその代表例でしょうか?彼らのおかげで「ザ☆オーディション」が全国レベルで注目されるようになったことは間違いない事実で、とてもありがたいことだと思っています(実際に崎山君がバズった後の昨年Vol.11は、音源審査をなくし応募用紙だけでエントリーできるレギュレーションに移行して以来、過去最大のエントリー数となりました。特にギター弾き語りのシンガー・ソングライターが数多くいた、というのは明らかに「崎山蒼志効果」でしょう)。
さらに彼らに続こうと今まさに勝負しようとしているRitomoMINOR THIRDがいるわけです。
また、静岡を基盤に様々な形で静岡の音楽シーン、企業の広告宣伝に関わり、その存在を確かなものにしている奥山尚佳畑中摩美川口直久といったアーティストたちも神谷と私の大きな誇りとするところです。

ということで、「ザ☆オーディション」の「出場者の多様性」故に、前述の(3)が必要なのです。

出場動機が異なれば、当然審査員のコメントも変わります。
沼津、静岡、浜松で開催される地区審査は、多い時で各40組合計120組ほどが1曲ずつその場で演奏、歌い、その後審査員(私を含め2名)がコメントする、というスタイルで行われています。例えば、ボーカル・スクールの発表会ぐらいでしか人前で歌ったことのないカバー部門出場者には、ただ歌うだけではなく、「お客さんに観てもらう」という意識を持たなければいけないこと(具体的には手や体の動かし方など)や、「自分の好きな歌だから」とか「自分の気持ちにピッタリの曲だから」という理由で選曲するのではなく、自分の知らないアーティストやジャンルの曲も含め、「自分の声質や音域にあった曲」=「自分の魅力を引き出してくれる曲」を選曲するようにアドバイスすることが多いです(ボーカル・スクールの先生は案外こうしたアドバイスをしないので、出場者の多くは「?」となることが多いのですが・・・)。
逆に「プロ、メジャーデビューを目指したい」という出場者には、かなり辛口なコメントを連発することになります。「詞やメロディーのオリジナリティ」がその標的になります。特にライバルが多い形態(弾き語り、3ピースや4ピースバンドなど)の出場者には「このままではただ埋もれていくだけですよ。」などとコメントして、意気消沈させてしまうこともままあります。またこれはよくありがちなことなのですが、「どんな音楽を届けたいか?」とこちらが質問すると、「年齢や性別に関係なく、たくさんの人をハッピーにできるような音楽です。」と屈託なく答える出場者がいます。すると私の口からは「そんなことを思っているならば、ショッピングモールで無料ライブをたくさんやって、いつも見に来てくれる固定ファンに守られながら活動していけばいいんじゃないですか?」というセリフも飛び出します。事実、そういう活動をしているアーティストはたくさんいます。それが間違いだと言うつもりはありませんが、それではプロになることなどできません。

「アドバイス」と言えば、ここ数年私が審査後、総評として必ず口にしている言葉があります。それは「『1年後の自分』をしっかりと頭と心に描き、そこに向かって活動するように。」というものです。出場する理由、目的は違っていても、この行動指針は誰でも同じだと思っています。

 

● 今、ワンマン・ライブで50人集客できるのなら、200人を目標にする(正に今のRitomoさんがこの渦中にいます)。

● 人前で演奏したことがなければ、地元のお祭りでもCafeや居酒屋でもいいので一度人前で歌い、その緊張感や楽しさを味わう。

● 今回はカバー曲でのエントリーだったが、来年はオリジナル曲でエントリーしてみよう。

● オリジナル曲のストックが5曲しかないのなら10曲にして、同じ30分の持ち時間のライブでも、セットリストを変更して臨めるように楽曲制作に励みましょう。

 

などなど、少しでも進歩できるよう、そしてそれによって音楽をもっと自分の身近に引き寄せ、楽しめることを目標にし、成長することが一番大切だと思っています。

本来、音楽に優劣をつけることはあってはいけないことだと考えています。ただし、敢えてその場に参加費を払ってまで出場し、目的は何であれ、そこに何らかの意義、価値を見出そうとしているミュージシャンたちには敬意を払い、責任を持ってコメントすべきだとも思っています。

 

3月15日にspace-Kで開催されるVol.12本選に向けてエントリーしてきたミュージシャンは100組余。昨年よりも若干その数は少なくなりました。
私は冗談半分本気半分で前回の覇者Ritomoさんに「君がエントリーしようと思った人たちの気持ちのハードルを少し上げたかもね。」と言いました。もしかしたらアマチュア・ミュージシャンの中には「あの人くらい歌えて、演奏して、いい曲書けないといダメなのかな?」と思ってしまった人がいるかもしれません。その逆で彼女に刺激を受け「私もRitomoさんのようになりたい。」と思った人もいるでしょう(応募用紙の中に「明らかにそうだ。」と断言できるミュージシャンの名前が書かれたものを、しっかり目撃しました)。

Ritomoさんは「どうせ久保田さんは新しい才能を見つけて、私から去っていくのね。」と相変わらずお茶目な発言をしていますが、果たしてそんなアーティストが出てくるのでしょうか?
仮に出てきたとしても、Ritomoという才能にかける熱量は決して変わることはありませんが・・・。

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