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その気にさせる。

7月15日付けのブログでラジオの面白さ、そして難しさが「1対1のコミュニケーションを取るのと同時に、1対不特定多数とのコミュニケーションも成立させること。」にあるというお話をしましたが、これと同じくらい大切で、やり甲斐のあるラジオの役割、醍醐味がもうひとつあると思っています。それが「その気にさせる。」ということです。

K-mixの中では15年ほど前から「広告メディアから販促メディアへ」というのがひとつの合言葉になっています。

民間放送局であるK-mixはスポンサーから電波代と番組制作費やCM制作費をいただいて、番組やCMを制作し、放送しています。不動産に喩えれば「電波代」は「土地代」で、「制作費」は「建築費」と言えば分かり易いでしょうか?同じエリアの同じ坪数の土地を同じ金額で購入したとしても、そこに簡素な家を建ててコストを抑えるか、それとも贅沢な資材を使って立派な家を建てるのかで、当然出費は変わってきます。
それと同じことで、同じ1時間の放送枠でも、デビュー間もないパーソナリティを使って、リスナー・プレゼントも用意せず、ただ曲をかけ、その曲のインフォメーションをシンプルに紹介する番組と、大物パーソナリティを起用し、放送作家を雇い、中継コーナーを行うためにレポーターやスタッフを確保し、毎週豪華なプレゼントもする番組とでは、その制作費は一桁、あるいは二桁違ってもおかしくないかもしれません。

スポンサーはまず何のためにK-mixで番組を放送するのかを考え、その上で広告予算と、K-mixで番組を提供することで得られる有形無形の利益を天秤にかけ、どういった番組をどれだけの経費を使って制作し、放送するかを考えます。「何のために」という点について言えば、やはり一番多いのは自社製品のPR、販売促進、来店客の増加といったあたりでしょうか?つまり、「物が認知され、売れ、人が集まり、結果的に売り上げが上がるため」に番組を持つ、というのが一般的な考え方です(最近これとは別に、直接的に消費者と接触することのないB to B企業が、リクルート、つまり人材確保を目的に会社名や企業イメージをPRするCMを放送する、というケースが一方で増えていますが)。

「販促メディア」というのはまさにこのことで、ただそのスポンサーのイメージを電波に乗せるだけでなく、スポンサーの商行為について多くの人に知らせ、それを知ったリスナーが、その情報をきっかけに行動する、というのが我々の大きな努めと言っていいのだと思います。
例えば「K-mixで紹介していたあの自動車、良さそうだから週末にショールームへ行って試乗してみようかな。」とか「K-mixで紹介していたイベント、家族連れで楽しめそうだから行ってみようかな。」、「パーソナリティの〇〇さんが番組の中で実食していたフルーツ、シズル感たっぷりでムチャ美味しそうだったから買って、食べてみたいな。」などなど、実際にK-mixをお聴きいただいている皆さんでしたら、ご自身の体験にも思いあたる節があるのではないでしょうか?

つまり、本来「ラジオを聴く」という、どちらかと言えば受動的な行動を、「買う」「行く」「聴く」「観る」「試す」といった能動的行動に結びつける、という作業がラジオの価値を決める大きな要因だということです。

こういう考え方は別に対スポンサーとの関係だけで成り立っていることではなく、K-mixで様々な音楽を紹介するという、ごく当たり前の行為にも当てはまります。K-mixで流れてきた聴いたことのない音楽にピンときて、パーソナリティの曲についてのコメント・トークを聴いて、それがきっかけでネットでその曲やアーティストのことをリサーチして、YouTubeに動画が挙がっていればそれを観てみたり、Spotifyでもう一度聴いてみたり、そして最終的にダウンロードしたり、CDを購入したりする、という一連の流れは、我々番組制作者、情報送出者として一番起こって欲しいものだと言って間違いありません。「影響力」、ご時世的に言えば「インフルエンサー」ということでしょうか。

ネットが発達した現代では、以前のように音楽に接し、発見するメディアはラジオが独占する状態ではありませんが、それでもただ音楽を流すだけではなく、そこにパーソナリティという生身の人間が発する言葉、そこに込められたその人なりの思いが同時にリスナーに届く、というラジオのならではの強みがあることも確かで、これに番組制作者は責任と誇りを持つべきだと思います。

今年4月から新たに始まったライブ・プログラム「K-mix MUSIC SPECTRUM」(金 11:30~14:00)は、まさにそれを具現化するために編成されたミュージック・プログラムです。是非、izumiと番組スタッフがチョイスし、語る音楽に耳を傾けてみてください。

現在は廃止されましたが、ヘビーローテーション・システム「MEGA PUSH TRACK」に選ばれた曲は、その月1か月間で100回以上オンエアされていました。当然、リスナーの方々の耳につくわけで、興味を持っていただいた方がダウンロードしたり、CDを買ったりすることが他の曲よりも多くなることがほとんどです。
元々静岡県は「3%市場」と呼ばれ、モノの売れ具合は全国シェアで約3%と言われています。しかし、例えばK-mixがヘビーローテーションした曲のセールス状況をレコード・メーカーに見させてもらうと、そのシェアが7%だったり、時には10%を超えていたりするようなことがよくありました。このシェア数値はどちらかというと、レコード・メーカーにしてみればコンフィデンシャルなものなので、私のような外部者が本当は見てはいけないものなのだと思いますが、私は可能な限り、このシェア数値を見させてもらえるよう懇願すること度々でした。何故ならこの値こそ、K-mixのリスナー、ユーザーへの影響力の証であり、皆さんをどれだけ「その気にさせたか?」を可視化できるものだと思ったからです。メーカーの人からは「CD売り上げシェアをこんなに気にするラジオ局の人を見たことがない。」とよく言われたものです。

営業売上げはもちろん、聴取率、リスナー・メールの数、SNSのフォロワーやお友達の数などなど、そのラジオ局の力を示す指標はいくつかありますが、ミュージック・ステーションとしての自信や誇りを感じさせてくれるものとして、CDセールスの都道府県別シェア数値は、とても大切なもののように私は思いました。

これは極端な例かもしれませんが、私が過去に経験したCDの都道府県別売り上げの静岡県の最高シェア(発売から1か月間の、いわゆる「初動」のデータ)は、何と33.4%でした。このCDアルバムを買った3人に1人は静岡県民ということになります。3%市場であるはずの静岡県がその11倍のシェアを記録したわけで、当然東京都を抜き去って全国1位になりました。

   kainatsu『カテドラル』

 

そのCDアルバムのタイトルは『カテドラル』。2010年1月にリリースされたkainatsuのセカンド・アルバムです。

残念ながらCDパッケージのセールス状況は減少の一途を辿っていますが、音楽配信の世界であっても、そのダウンロードの動機が「K-mixで聴いたから」であったらと願わずにいられません。

 

最後に私が感動したラジオ・パーソナリティーが発した「その気にさせる」言葉をご紹介します。


今からもう25年以上前のことだったと思います。私の一期下のパーソナリティであった高橋美江さんが、ある生放送でとある大型遊園施設の紹介と、その施設の入場チケットをプレゼントするという告知をした時の話です。彼女は一通り施設について、期間限定のアトラクションや催しについて紹介した後、「今日はこの◆◆の入場券を4枚セットにして1名の方にプレゼントします。」と言いました。これで後は応募方法や〆切などをお伝えすれば、この告知は成立するわけですが、美江さんは最後にこう一言付け加えてこのコーナーを〆ました。

 

「4枚ですと料金は〇〇〇〇円になります。もし当選すればそれが浮くわけなので、その分で◆◆に行った帰りに、ご家族4人でいつもよりもちょっと豪華な外食をしてみたらどうでしょうか?」

 

この言葉によって、その家族4人の食事の風景、子供たちの喜ぶ様子がまざまざと目に浮かぶのです。そして「応募してみようかな。」という気持ちを起こさせるのです。

 

ラジオの「その気にさせる」力で、あなたの気持ちがグラっとくれば、仕事冥利に尽きるというものです。

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